プロローグ
両親が交通事故で死んだ。生き別れとなったらしい実妹と会った。なんだかそれだけ言うと漫画や小説で王道のパターンだと思う。
でも違う。
ぼくの場合は家まで持ってかれた。しかも放火魔ときたもんだ。ちょっと不幸にもほどがあるぞ神様仏様よ。新手のいじめかよ。
そんな状態だからぼく・星之宮深黒と妹の真白は各自で住み込み可なバイトを探すことになったのだが——————
住み込みってのはやっぱり難しい条件だ。新聞配達ならあるかも、と思い尋ねてみたものの部屋がいっぱいだそうだ。
どれだけ神に見放されてるのか。やっぱり今までお賽銭壱円玉しかいれたことなかったのが原因なのか。ま、それはないだろうが。
ぶらぶら歩いてると駄菓子屋があった。おお、老舗っぽいなこの店。横にある石段はどうやら上にある風宰神社に行く道みたいだ。だって看板あるし。どうでもいいけど。
こういうおばあちゃんがやってそうな店なら住み込みないかな、なんてないだろうけど。一応モノは試しというし。あれ?なんだっけ。まあいい。行ってみよう。ついでに久しぶりに「きなこ棒」でも買おう。好物だし。
駄菓子屋だ。古き良き駄菓子屋だ。現代の日本でも存在してるのかこんな店、といいたくなるほど大正か昭和時代に戻った感じがする。ぼくは平成生まれだが。
「こんにちはー……」一応言ってみる。返答は……
「あ、ハーイ。 今行っきまーす☆」テンションが異様に高い声が帰ってきた。店の奥から女の子が出てきた。見た瞬間、かなりびっくりした。
なんとその女の子は————巫女服を着ていた。上にある神社ならまだしも、駄菓子屋で巫女服。すごい組み合わせだ。ぼくがほうけていると、
「ん? 何ナニ? あ、コレ? かわいーでしょ。アタシ上の風宰神社で働いてるんだ。駄菓子屋はバイトだよん。」……最近暗い気分なぼくにとってはなんだか腹が立つ程のハイテンション。よほどうれしいことでもあったのか。何だいったい。それはどうでもいい。所詮は赤の他人なのだから。
「それじゃぁ……きなこ棒10本。」
「おおっ! きなこ棒かっ! アタシも大好きだよ〜う。ハイ、まいどありがとうございましたぁ☆」
無言でぼくは去った。
久しぶりに神社にでも寄ってくかな……と思い、のんびりと石段をあがる。神社にバイトなんて巫女ぐらいで男の仕事はないだろうが、仕事運があるか占ってもらおう。
——と思った刹那、
人間が落ちてきた。
ぼくまで落ちてしまった。
「………………で………か……?」なにか声がきこえる。
「だ……う…で…か…?」この声のトーンからして——女の人か。
「だいじょうぶですか…?」ああ、やっと聞き取れた。大丈夫か、とぼくに聞いているらしい。いや大丈夫かと聞かれても。
段々視界が明るくなってきた。ここは……どこだ?まだ白いモヤのようなものがかかってる感じでよくは見えないが、たぶん和風な天井が見える。
「よかった、目を覚ましたのですね。」視界がハッキリしてきた。巫女服の女の人が見える。しかも1、2……5人か?多いな結構。
さっきの駄菓子屋天然巫女さんはいないようだ。
「すみません、私の不注意で……あなたまで巻き込んでしまい……申し訳ございませんでした!」
「え……あ、ああ。そういえばぼくも落ちて……なるほど、気絶したんですか。ぼく。こちらこそ看病していただいたみたいで。ありがとうございます。えぇっと……」
「あ、私はこの神社の巫女、風宰 浅野、と申します。あなた様のお名前は……」
「星之宮 深黒といいます。」
「では深黒様、あなたに何かお礼とお詫びがしたいのですが……なにか欲しいもの等ございませんか?」
人間このようなタイプの人間に欲しいものは何かこ聞かれると答えにくいと思う。表裏がなさそうな聖人君主みたいな人、今のご時世にいたのがびっくりだ。
「うーんと……特には……ないです。」
「しかし……なにかして欲しいことなどもございませんか? ご迷惑かけてお詫びさえもできないなんて私…………」あ、結構ネガティブだこの人絶対。まぁ今にも泣きそうな顔をされてはなんだか男としてどうかと思う。
「……それじゃ、ぼくを占って下さい。丁度占って欲しくてここに来たんですよ」
——あれ? なんか変なコト言ったか? ぼく。巫女さんみんなぽかーんとしている。
「……はっ……はいっ! それでは占わせていただきますっ!」…………やっぱり言い方間違えたのかぼく。
巫女さんについて行くと和室だった。書院造りだっけ?
ともかく和だけど神社っぽくない部屋だ。まぁぼくのイメージだから他人はどうか知らないが。
「深黒様。それでは貴方を占ってさしあげましょう。」奥から出てきたのは風宰さんだった。
風宰さんは懐から呪符……? ま、まぁよくわからないが漫画とかで魔物を封印するときに使いそうなお札を出した。おお、本格的だ。
周りは静寂につつまれている。ぼくが緊張していると、風宰さんが近づいてきた。
で、気がついたら
額に札を打ち付けていた。
うん、なかなか痛かった。クリティカルヒット。この人はまたぼくを気絶させるのではないか。そう考えてしまう程痛かった。
でも叫べなかった。
風宰さんは一瞬、なにか叫んだと思うと次に呪文を呟く。早すぎる上、意味不明なのでさらに混乱する。
人間こんな早口ができるのか。てゆうかコレってただの占いじゃなかったか? いつのまに儀式まで発展してんの。
たぶん風宰さんが一通り呟き終えると、体に電流が走ったように感じた。これやっぱり占いでないのでは?
「ふぅ……終わりました。なんというかごめんなさい」
いや、終わっていきなり「ごめんなさい」なんて言われると不安になります。風宰さん。
「えぇっと……いい結果と悪い結果、どっちから聞きますか?」
ということはどっちもあるのか。
「どっちから聞いても変わりはないでしょうから、いい結果からでお願いします」
「そっ、そうですか。じゃ言います。喜んでください。」
「深黒様は、現在恋愛運が世界一いいみたいです。」
……なんてコメントすればいいんだぼく。わーうれしいですやったぁわーいわーいとでも言えとでも? 恋愛がどーした。そりゃぁちょっとは興味あるけど……っ//////
「そうですか。複雑ですね。
「あ、うれしくないんですか? 深黒様。世界一ですよ。おめでとうございます。」
「いやまぁうれしいです。はい。じゃぁ悪い方を……」
「ノリ悪いなぁ」なんか違う巫女に言われた。
「こらっ陽子! あ、すみません深黒様。じゃぁ……悪い方を。直球に言います」
「貴方、呪われてます。深い深い呪い。とりあえず今の状態が続けば18歳で亡くなられると思います。」
……ホント直球ストレートだなオイ。
「呪われてるのは知ってましたけど、あと1年ですね。今17歳ですから。」
「……あまりおどろかれないのですね。呪いのことを知っていたようですし。」
「呪いに関しては……どうでもいいんです。できれば関わりたくない。でも……生きられるなら生きてたいですね。妹もいますし。置いて行けないですから」
巫女さんたちはじっとぼくを見据えている。でも、風宰さんは俯いている。
「そうですか……いろいろ事情があるのですね……」
当然、
「ならさー、ここにいればいいんじゃないの? あたしみたいにー」
口を開いた。さっき風宰さんに怒られてた—陽子さん、だっけ。
「でも陽子っ…………! あぁ、でも……まぁ……いいか。うん」
なんか一人で納得している。本人を忘れてないか?
「うん、そうするいかないか……。よし、深黒様」
「は、ハイっ!」
「この神社に住んでください。でないと死にます。」
風宰さんて実は物事を直球で話すハッキリした人なんだと思う。って、
「ぇぇええッ?! でもっぼく金ないしっ、バイト探し中で……」
「大丈夫です。この風宰神社でお手伝いしてもらいます。」
「っ……! えっと、ここに男性の方っていますか……?!」
「私の兄が神主をしておりますが、今は出張中ですね。はい。現在、男性は誰もいません。」
「ええっ……でも、、、」
「深黒様」
「この神社の土地には他の土地にはない強い神気がこめられています。くわしく説明すると長くなりますが……単純に言うと、ここに3年間ほどいるだけで呪いが段々と解かれていくということです。そのためにそこにいる陽子だっているのですし……」
「風宰さん……。でも……」
「あっ、沙夢ー。妹さんに許可とってくれたー?」「はい〜。浅野さん。最後すっごい粘ってましたけど『お兄ちゃんの死にはかえられない』なんて言って許可くれましたぁ。」
……今の会話、どういうことだろう。ちょっと、今までのシリアスっぽい雰囲気は?
「ということですよ深黒様。妹さんの許可もらってきちゃいましたぁ〜☆」緑の髪の巫女さんが言った。
「えっちょっt……」
「右京ーさっそく深黒さんの部屋用意してーっ」「了解した」
「沙夢ー服用意してーっ通常のでいいからーっ」「かしこまりましたぁ♪」
「左京ー至急ウィッグ買ってきてーっ」「まかせろぅっ!」
なんか勝手に話が進んでいく……ってウィッグって!なんでいるんだそんなもん!
たしかにぼく呪われてるようん。酷い。
仕事内容の説明を受け、いろいろ弄ばれた。
「似合ってますよ」「おおっ、かっわいーw」「わわっ、すっごーいミっちゃん。ここまでくるとは思わなかったよぉ」「似合ってる」「かわいーぜミクロ☆」
5人の巫女ズが感想言い合った後、
「やっほー浅野さん遅れてゴメンナサイっとあれれ?! さっきのきなこ棒のコ?!かなぁ。うっわ分かりづらいよぅその髪!」
まぁ、人によってはわかるだろうが、
ぼくはツンデレ風美少女巫女みたいになっていた。